【社長インタビュー】研究者から起業家へ。研究成果の早期社会実装で、世界の環境・食糧問題に貢献する
現在、アクプランタでは積極的に採用活動を行っております。あらゆる職種において、SDGs、農業、食糧問題、環境問題、植物科学などのキーワードに関心があり、世界中で問題視されている異常気象を原因とした、農業生産の低下と食糧不足の問題の解決に取り組む気概のある方を求めています。
そこで、本記事から3回連続で「アクプランタで働く人」をご紹介していきたいと思います。第1回目は、CEO代表取締役社長の金鍾明(キム・ジョンミョン)です。金からは、創業のキッカケやアクプランタにかける思い、そして今後のビジョンや一緒に働きたい人物像などを聞きました。
金の気さくな人柄と、植物科学を通じた社会貢献にかける熱い想いが伝われば幸いです。ぜひご覧ください。
アクプランタとは?
社長の金が、理化学研究所の研究員時代に発見した研究成果をもとに、植物の乾燥・高温耐性を強化するバイオスティミュラント資材*1『Skeepon(スキーポン)シリーズ』を開発・販売している会社です。
プロフィール
長崎大学水産学部を卒業後、国立奈良先端大学院大学にて学位を取得(博士:バイオサイエンス)。酵母菌を用いたDNA複製研究を進めるとともに、ミトコンドリア維持に必須のアミノ酸代謝経路を発見した(学位論文)。その後は、UCLA分子生物学研究所にて、酵母菌を用いたエピジェネティクス研究に従事。帰国後、 理化学研究所 植物科学系研究センターにて研究員となる。植物研究分野において、環境ストレスとエピジェネティクスを結びつける研究分野を開拓した。
この研究の成果から、全ての植物が酢酸を利用して環境ストレスに耐性化することを発見。研究成果をいち早く社会実装し、地球温暖化による地球の食料問題と環境問題を解決するため、アクプランタ株式会社を設立し、代表取締役社長CEOに就任した。東京大学大学院農学生命科学研究科特任准教授を兼任。
まずは、金さんの子ども時代を教えてください。
大阪生まれ大阪育ちで、父は音楽の先生で、母は演歌歌手。音楽が身近な環境で育ちました。幼い頃からピアノを習っていましたが、自分は音楽の道に進むのは違うなと思っていました。それよりも、自然に興味があったんですよね。仲の良い友達と海釣りに行ったり、一人で海を眺めたり。そんな時間が好きな子どもでした。
小学生の頃には、住んでいた大阪から奈良まで一人で電車を乗り継いで、ハイキングを楽しんでいました。この頃から、生物学者になりたいと思うようになりました。自然の中にどっぷりつかるような研究スタイルがいいと思い、海が好きだったことから練習船に乗って実地調査ができる研究者になることを目指していましたね。大学は長崎大学水産学部に進学して海洋生態学を学びました。
アクプランタは、植物の環境ストレス耐性を高める製品を開発・販売しています。研究分野が海洋学から植物学へと大きく転身されていますが、どのような経緯があったのでしょうか。
長崎大学で学ぶうちに、分子生物学に興味を持ったことがキッカケでした。そこから京都大学農学部を経て、大学院進学では奈良先端大学院大学に入りました。酵母菌を使ってDNAがどうやって2倍になるかという研究をしたのですが、この時に基礎研究にハマったんです。自分に合っているなと感じました。
研究を進める中でもっと深く追求したい、自分の可能性に挑戦したいと思うようになり、研究室の恩師の薦めもあって、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)分子生物学研究所にて、ポスドク(Postdoctoral Researcher/大学院博士後期課程の修了後に就く、任期付きの研究職ポジション)を経験しました。帰国後、理化学研究所で初めて植物にふれました。これまでにやってきた基礎的な研究内容と、植物科学をつなぐ新しい研究分野を開拓しようと意気込んでいましたね。そこからは、植物の基礎研究に没頭しました。
今思うと、大学からポスドクまで教育環境に恵まれていたと思います。特に奈良先端大学院大学時代とUCLA時代には、とても優秀で個性豊かな研究者にたくさん出会いました。ノーベル賞を受賞している先生や、候補になっている先生と一緒に研究する機会にも恵まれ、今でも付き合いは続いています。
これまでの研究を通して出会った人達は、興味のある内容で研究を突き詰めていただけでなく、最終的には研究成果を社会へ還元したいという強い思いを持っていました。彼らのそんな姿勢が、私が起業したことに影響しているとも感じています。
続いて、アクプランタ創業のキッカケを教えてください。
理化学研究所で研究員をしていたとき、弊社製品「Skeepon(スキーポン)」の基礎技術となっているメカニズムを発見したことがキッカケです。
当時、最先端だったエピジェネティクス(※1)の研究に取り組む中で、植物の生き死に酢酸が関係していることを見つけ出しました。このメカニズムを発見した時、世の中を変えられるかもしないと思いました。この技術を使って製品開発をすれば、干ばつで苦しむ国や、砂漠化が進んで植物が育たない地域でも、少量の水で植物を育てられる可能性があると直感したからです。世界中で問題視されている環境問題や食糧問題の解決の一助になると。
そう考えた時に、このメカニズムを最も理解している自分が起業し、スピード感を持って社会実装していきたいと思いました。知り合いの先輩経営者にも背中を押してもらったり、タイミングよく引っ張ってくれる人もいて、ビジネスの世界に飛び込むことが出来ました。
※1:DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステムおよびその学術分野のこと。
アクプランタの今後の展望を教えてください。
私個人としては、科学者としての技術と知見と感性をうまく使って、世の中に貢献していきたいと思っています。
世界規模で見ると、50年後や100年後にはもっと環境問題が複雑で深刻になっているはずです。自分が生きている間だけではなく、子どもたちの世代など後世にも喜んでもらえる仕事がしたいです。そして、それは弊社の技術を使えば実現可能だと思っています。世界中どこでも通用する技術ですので、どんどん広げていきたいです。
ただ、その時に気を付けたいのが、現地の人達の生活や文化を壊さないことです。そもそも、環境問題や食糧問題解決の一助となり、人々の生活向上に役立ちたいと思ってビジネスを始めたので、使う人の生活に寄り添った製品や使い方を研究・提供したいと考えています。その中で、現地の子ども達の健康や教育に間接的に良い影響を与えられればと思っています。
このほか、使えなくなった農地の代わりとなる植物工場向けの技術開発も進めています。ここでも極限まで節水して植物を栽培することができる弊社技術を活用して、そう遠くない未来に宇宙で農業を行うとなった場合にも役立つシステムを開発したいと思っています。宇宙ステーションで、人間の出した二酸化炭素を使って新鮮な野菜を育てることを考えると、面白いですよね。自分が生きている間に宇宙での農業が実現するかはさておき、そのキッカケを作れたらいいと思っています。
また、森林の再生にも興味を持っています。森林減少の影響を受けて移住させられる人を減らしたいのです。そこに住む理由は第三者が見ると分からないことも多いですが、文化や民族性など見えない価値があると思っており、それらを守り継承していくことは重要だと考えています。
また、東アフリカやスペイン、イタリアなどでは干ばつが深刻だと聞きます。干ばつの問題は、今後世界のいたるところで起きる可能性があります。そんな時にも、弊社の技術を使えば従来に比べて少ない水で農業ができるため、その地域の食糧問題解決の一助を担えると思っています。
そうして、困っている人がいる場所へ行き、助けになれるような会社にしていきたいです。
最後に、どのような人と一緒に働きたいのか教えて下さい。
プロフェッショナルとして主体的に仕事ができ、他者と協力して化学反応を起こしていける人と働きたいと考えています。こちらから仕事を押し付けたくないと思っています。そのためにも、それぞれの得意分野があるメンバーが互いに尊重、尊敬し合いながら存分に力を発揮してもらえる環境を作り続けたいと思っています。また、家庭の事情などに合わせて働き方は柔軟に対応していきます。
私はこれまで、研究者というプロフェッショナルとしてのキャリアを歩んできたため、人には得意なこと、不得意なことがあることを身をもって理解しています。例えば私の場合だと、分子生物学や植物科学に関する知識や経験、研究については自信を持ってプロで得意だと言えますが、それ以外のことは不得意なことも多いんです。不得意なことを克服しようとする姿勢は大切ですが、不得意なことを周りに相談してサポートを得ながら進めることも大事だと思っています。
今のメンバーは、そういったことが出来る人達が集まっています。例えば、COOの中坂さんは、弊社のビジョンに共感し、ビジネスを通じて社会をより良くしたいと思いながらも、数字をシビアに見て会社の経営面を支えてくれており、なくてはならない存在です。また、彼自身これまでに農業関連で様々な経験をしてきているので、私にはない視点で意見をもらえるのも有難いです。
また、R&D グループリーダーの工藤さんは、私と違って元々農学がバックグラウンドの研究者で、彼の意見や視点はとても参考になります。また、こんなこともできるんじゃないですか?と自ら提案して実践してくれるので、一緒に働いていて楽しいですね。そうやって新しいことに興味を持って挑戦してくれることは嬉しいです。
研究アイデアもたくさんあるので、新しい研究開発をどんどん進めていきたいですね。それら植物周りの研究を面白いと感じ、一緒に突き詰めていける研究者仲間も求めています。また、外国籍の人も積極的に採用しているので、よりグローバルな職場環境になっていくことも期待しています。