ウガンダ農業研究機構の担当研究員ラマサ二・イディさんインタビュー(前編)

アクプランタでは、3年前からウガンダ農業研究機構(NARO)と共同で、スキーポンの実証試験に取り組み、昨年、同国での製品登録が承認されました。同国でも、気候変動の影響で、農地での干ばつや高温、水不足が深刻化しています。

スキーポンを使った共同実証試験の中心メンバー、ラマサニ・イディ (Ramathani Idd)役職・研究員で仮置き)に、これまでの課題や現地でのスキーポンの試験で見えてきた効果、これからの展望などについてお伺いしました。2回に分けてご紹介します。

ーーウガンダでの作物栽培にはどんな課題があるのですか。

いちばん大変だったのは、水不足と、そこから来る干ばつです。気候変動の影響で乾季の暑さが年々厳しくなり、浅い井戸はすぐに枯れてしまう。かといって灌漑をすすめるにも費用がかかります。

私が担当しているのは野菜の生育研究ですが、ふだんは朝と夕方の2回、水をやる必要があります。水そのものを確保することも、その水やりにかかる手間も、大きな負担でした。

ーーそもそもウガンダでは、農業用水をどう確保しているのですか。

農家によってさまざまです。雨水を貯水タンクにためる人もいれば、井戸を掘って地下水を使う人、上水道を引く人もいる。ただ、井戸を掘るとなると、掘削の費用、ポンプ、貯水タンク、灌漑設備と、初期投資がかさみます。

ーーウガンダの主要作物を教えてください。

地域によって、主要な作物は違います。いちばん重要な輸出作物はコーヒーです。国内ではほとんど消費されず、輸出が国の大きな収入源になっています。食料としては、マトケと呼ばれる料理用のバナナ、トウモロコシ、コメ、キャッサバ、サツマイモ、ソルガム、ミレットなどが主な作物です。地域によっては、オレンジやマンゴー、野菜、家畜用の牧草も大切な産業になっています。

CAP:NAROの試験圃場。スキーポンを使った区画に目印の旗が建てられていました

ーースキーポンと出会ったのは、3年前でしたね。

初めて話を聞いたのは、ちょうど野菜の苗を植え替えようとしていた時期でした。ただ正直、最初はその効果を鵜呑みにはしていませんでした。

まず試したのが、鉢植えのトマトです。ふつう、苗を植えたらすぐに水をやらないといけないのですが、スキーポンを使った苗は、その日一日水をやらなくても、ぴんとしていた。反対に、処理していない苗は2〜3日でしおれはじめる。その時に「これは本物だ」と思いました。

2〜3週間たつと、差はもっとはっきりしました。乾季だというのに、スキーポンで処理したトマトの苗は、ぐんぐんと育っていたのです。

ーースキーポンを使う一番大きなメリットは何ですか。

乾季でも育てられるようになったことです。水の量も、水やりの回数も減らせました。乾季に野菜を出せると、雨季より高く売れる。たとえばトマトなら、雨季には1バケツ5,000シリング(約220円)くらいでも、乾季には40,000〜50,000シリング(約1,800〜2,200円)になることもあります。

毎日水やりをしなくてよくなった分、その手間を草取りなど別の作業に回せるのも大きいです。ふつうの乾季なら、朝と夕方、1日2回の水やりが必要です。でもスキーポンを使うと、2日に1回くらいの水やりでも、作物は健全なままでいられます。今日水をやれば、明日は水やりをせずに草取りができる。ひとりで何役もこなせるので、人手不足や人件費の負担も軽くなります。自分の井戸や灌漑設備を持つ農家にとっては、水をくみ上げる電気代や設備の維持費が大きな負担なので、効果は大きいです。

ーーNAROでの試験は、どんな作物で導入されているのでしょうか。

最初に導入したのは、トマトのような高付加価値の園芸作物でした。面積が限られていても収益をあげやすいからです。そこから、収益作物のコーヒー、食糧の安全保障に関わるトウモロコシやバナナへと広げ、いまはマンゴーやオレンジの認定苗の生産にも使っています。苗を健やかに保ち、生存率を上げるためです。

NAROでは今、気候変動に対応する新しい技術を広めることに力を入れています。干ばつ・高温・塩害に、作物がどれだけ耐えられるか。スキーポンもその一つとして、さまざまな作物で試しています。私自身はカボチャの育種プロジェクトも担当していますが、スキーポンで処理した苗は週に1〜2回の水やりでも生存率が高く、育種の面でも手応えを感じています。

ーースキーポンはウガンダでの製品登録を終え、いまは国内での普及活動に重点が移りました。農家の反応は、いかがですか。

関心はとても高いです。今年から国内の農業地域を回り、農家向けの研修をしています。まず30分ほど説明をして、そのあとデモ圃場で、薄め方やまき方を実際にやって見せる。農家の皆さんがそのまま使えるよう、作物ごとの使い方を具体的に伝えています。

あちこちからお声がけをいただいていて、なかには500人、1,000人という規模で研修を希望する地域もあるほどです。

ーー最後に、研究を通じて見えてきたスキーポンの効果を、ひとことで伝えるとしたら。

使い方はとても簡単で、防護服やマスクのような特別な装備もいりません。環境にもやさしく、短い期間で効果が見える。シーズンに一度処理すればいいので、長い目で見ればコストも抑えられます。農家の方々にも、そうしたことを伝えていきたいと思っています。

(後編に続く)