【ウガンダ訪問その7】リリー・マーガレットさんとお天道様

4月22日、農村視察のグループは、ウガンダ北部のLira(リーラ)に着きました。地域の農業研究機関や農業組織、農家を回り、地域の農業の現状や課題などを把握するのが目的です。

ウガンダ北部は近隣国への交通の要衝であり、肥沃な土地と年2回の雨季があるため、農業のポテンシャルが高い地域です。しかし、20年に及ぶ内戦の影響で他地域に比べて貧困率が高く、農業関連のインフラや知識の普及は進んでいません。さらに、世界的な肥料価格の高騰や気候変動による干ばつの影響も目立つようになっています。

Lira中心部周辺

 

まず、ンゲッタ農業研究開発研究所(Ngetta ZARDI)へ。アクプランタの共同研究のパートナー、国立農業研究機関(NARO)の関連機関の一つで、ウガンダ北部地域の農業技術の開発と普及の拠点になっています。

Laban Turyagyenda・ンゲッタ農業研究開発研究所長(上写真・左端)をはじめ、研究員の方々が出迎えてくださいました

 

スキーポンの作用や効能について金CEOが説明した後、NAROと予定している実証試験の一部を、気候が異なる北部でもできないか、できるとするならどんな作物がいいのかを相談しました。

次は農協組織「Nyeko Rac Community Farmer’s Cooperative Society Ltd」へ。

この組織はLira県を中心に5県で活動を展開しています。組合員数は現在500名で、トウモロコシ、ヒマワリ、ゴマ、ダイズを中心に栽培、出荷しています。ほかに、小口貸し付けや種、肥料・農薬の販売など、手広く運営しています。

Nyeko Rac Community Farmer’s Cooperative Society Ltdでのヒアリングの様子

 

マーケティングの担当者は、地域農業の現状や課題について、二つ挙げました。

一つは干ばつ。特にここ2-3年で、天候がさらに不安定になっているといいます。この地域の農業は、年2回の作付けが一般的ですが、うち1回は、干ばつの影響で、作物の生産量が減りがちだ、とも。

こうした問題の影響を少しでも軽減しようと、組合では、干ばつに強い作物や品種を育てるよう呼びかけているそうですが、それだけでは難しい面もあると話していました。「不作で農家の収入が減った際の保険が整備されていない。あるといいのですが」と担当者。

もうひとつは、豪雨による洪水です。特に、湖に近い農地での被害が目立っているそうです。

Nyeko Rac Community Farmer’s Cooperative Society Ltdの倉庫と、中に設置された製粉機

 

事務所に隣接する倉庫にも案内してくださいました。中には、新しいトウモロコシの製粉機が。農家がこの機械で直接製粉し、出荷する仕組みを取り入れることで、収入を増やそうと、ウガンダ農林水産省(MAAIF)などから支援を受け、今年から導入したそうです。

 

農協スタッフの案内で、近くに住む小規模農家を訪ねました。農協から車で十数分。伝統的な茅葺屋根の建物が見えてきました。Lily Margaretさんとそのご家族の家です。

Lily Margaretさん(左端)と家族、農協組織のメンバーたちと/鍬で土を耕す様子を見せてくれました/Lily Margaretさんの家のダイズ畑。ここから得られる年間の収入はおよそ12万円/茅葺屋根の伝統的な建物。中は台所でした

 

Lily Margaretさんは今年78歳。闊達で朗らかな方でした。

計約2エーカーの農地でトウモロコシ、ダイズ、ヒマワリ、ゴマを栽培しています。

灌漑施設はなく、基本的に「お天道様」任せの天水農業です。肥料は牛糞を使い、農薬はトウモロコシの害虫対策として撒く程度。種まきや草刈りは、地域の農家に作業代を払って手伝ってもらっているといいます。雨が降り始める頃を見計らって種をまいても、期待通りに降らず、せっかく植えた作物が枯れてしまうこともあるそうです。

「神のご意思なんて、わからないものです。育たないかもしれないし、収穫できるかもしれない。枯れたらまた植えればいいんです。運に任せて」

Lily Margaretさんはそう語っていました。

Lily Margaretさん

 

※今回のウガンダでの活動は、独立行政法人国際協力機構(JICA)の「ウガンダ国干ばつでの植物生育を促進するバイオスティミュラントにかかるビジネス化実証事業」(2026年3月契約終了)が採択されたのを受けたものです。