「水やりと植え替えの手間を減らせたら」——東京・足立区でスキーポンを使い続ける横山農園

東京都足立区で、約350年にわたり農業を続けてきた横山農園。現在13代目を務める横山さんは、枝豆やトウモロコシを中心に、キャベツ、ブロッコリー、白菜、大根など、季節に合わせてさまざまな野菜を栽培しています。奥様のめぐみさんは足立区農業委員会の委員としてもご活躍されており、直売を通じて地域の人たちに採れたての野菜を届けながら、都市の中で農業を続けています。

 

スキーポンを使用したきっかけは、「植えたのに枯れてしまう」手間を減らしたかったこと 

横山さんがスキーポンに関心を持った背景には、乾燥による苗の枯れや、植え替え作業への負担がありました。

「雨が降ると思って定植をしたのに、結局降らずに、苗がクタクタになって枯れてしまうことがありました」

枝豆やキャベツなどを定植したあと、雨が降らなかったり、水やりが十分にできなかったりすると、欠株が発生します。

「20株、30株と枯れてしまったら、もう一度植え替えて、また水をあげるということを毎週繰り返しており、すごく無駄な時間だなと思っていました。

特に春先などの繁忙期には、そのほかの作業も集中しますし、苗の管理だけに時間を使うことはできません。」

そのような折、当時JA東京青壮年組織協議会(略歴:JA都青協) での活動を通じて当時まだ研究・試験段階で実例も少ない状態だったスキーポンを使い始めました。

試しながら見つけた、自分の畑での使い方

 

横山農園では、スキーポンが現在の形になる以前から、当社とやり取りを重ねながらさまざまな使い方を試してきました。

「例えば枝豆では、定植の当日か前日にスキーポンをあげておいてから、定植するという使い方をしています」

以前は定植後に欠株が出たら植え替えて、また水をあげて、ということを繰り返しやっていました。今は欠株がかなり減った実感があります。使い勝手がいいですね」と横山さん。

水やりについても、横山さんは変化を感じています。 

「スキーポンを施用する前は毎日のように水をあげていましたけど、今は2、3日に1回くらい。ある程度育ってしまえば、そのあとはそれほど水をあげなくても大丈夫だな、と思えるようになりました」

横山農園の枝豆栽培の様子

「水を運ぶ」だけでも、大きな仕事になる

 

横山さんがスキーポンを評価する理由のひとつに、都市農業ならではの水の問題があります。

現在は井戸などの設備が整っていますが、以前は離れた畑に水源がないこともありました。

「500リットルのタンクに水を汲んで、畑まで運んで、そこで水を撒く。水を運ぶだけでもかなり大変です」

水源が十分にない畑は、横山農園に限った話ではありません。

「井戸がない農家さんもたくさんいます。そういうところで、少ない水でも安定して作れるようになれば全然楽だと思います」

 

特に近年は、夏の高温や少雨が栽培の大きなリスクになっており、横山さんが就農した2000年代(20年ほど前)と比べても、夏の環境は大きく変わったと感じています。

「自分が農業を始めた頃は、暑くても33℃くらいだったかなという感覚です。今は35℃、40℃という世界になってきている。外で作業する人間のほうも耐えられないですよね」

だからこそ、作物へのストレスだけでなく、農作業そのものを効率化することにも意味があると横山さんは考えています。

「夏場の日中にやる作業は、以前より減ったと思います。植えたものが枯れて、もう一回植え直すというリスクが減れば、『やってみようかな』と思える作物も増えます」

 

周りの畑が弱る中でも、「うちは青々としていた」

 

長く使い続ける中で、横山さんが特に印象に残っている光景があります。

枝豆の栽培時期、周囲の畑では暑さや乾燥によって葉が弱っている中、横山農園の枝豆は青々とした状態を保っていたといいます。

「農家さんの畑を見ていると、みんな『もうダメだ』という感じになっている時に、うちは青々としていた。そういうのを見ると、違いはあるなと感じます」

もちろん、水をまったく与えなくてよいというものではありません。横山さんが感じているのは、限られた水をより有効に使えることです。

「同じ量の水をあげても、ストレスがかかりにくくて、生育が良くなる。そういう感覚ですね」

数値だけではなく、欠株の減少や水やりの回数、植え替え作業など、日々の栽培管理の中で変化を実感していることが、長く使い続けている理由です。

横山農園では枝豆のほか、トウモロコシ、ナス、トマトなどを栽培し、ほぼ全てにスキーポンを使用しています。

350年続く農園から、地域の農業へ

 

横山農園は、1680年から350年ものあいだ現在の東京都足立区で農業を営んでおり、横山さんで13代目。

かつて足立区周辺には田畑が広がり、横山さんの父親の世代には、遠くまで見渡せるほど家が少なかったといいます。

「時代とともに農地は減り、農業の形も変わりました。現在、横山農園では市場出荷だけでなく、週2回の直売も行っています。枝付きの枝豆やトウモロコシなど、朝採れの野菜を求めて訪れる地域のお客さんも増えました。」

そして横山さん自身も、スキーポンを周囲の農家へ紹介することがあります。「自分のところだけで使うというより、こういうもの(スキーポン)があるよ、と話したりしています。水がない畑だったり、暑さで困っている人だったり。安定して生産できるようになれば、農家にとっては楽になると思います」

 

横山さんの周囲でも、スキーポンに関心を持つ農家が少しずつ増えているといいます。 

自分の畑で試し、納得したものを周りへ伝えていく。

研究段階からスキーポンを使ってきた横山さんだからこそ、その言葉には、長年の現場での経験が詰まっています。

これからも、暑さの中で安定して野菜をつくるために

 

現在、横山農園ではトウモロコシを栽培しており、秋作でもスキーポンを使用する予定です。

秋冬に向けては、キャベツ、ブロッコリー、白菜、大根などの栽培も始まります。

 

横山農園で長年積み重ねられてきたスキーポンの活用は、これからの農業に必要な「作物を守ること」と「農作業を楽にすること」の両方を考えるヒントになっています。

横山さんご夫婦